
遺伝子と疾患
遺伝子と疾患
遺伝子と疾患
私たちはよく「それは遺伝によるものだ」という言い方をします。一目で似ていることがわかる家族内の特徴から耳たぶの形といった目立たない遺伝形質まで、私たちの体の構造の多くは、両親から受け継いだDNAによって決まります。
ヒトゲノムプロジェクトによると、私たちはおよそ20,000個の遺伝子を持っていると推定されています。DNAの中にある遺伝子は道具箱のようなもので、異なる種類の細胞がそれぞれ異なる形で遺伝子を利用します。大部分の細胞は、遺伝子が持つ非常に多くの機能のほんの一部しか利用していません。
すべての癌は、有害な変異(バリアント)、すなわちDNAの変化により引き起こされます。DNAの変異は頻繁に起こりますが、ほとんどの場合、無害で癌を引き起こすことはありません。例えば、細胞が分裂して新しい細胞を作るときに間違いが生じ小さな変化が起きるなど、DNAの変異は偶然生じるのが普通です。幸いにも、このようなバリアントは私たちの体により、通常は自動的に修復されます。
しかし時には、バリアントが修復されず、細胞が分裂してできた新しい細胞に受け継がれることがあります。このバリアントが有害で、細胞増殖やDNA修復の制御などの重要な機能を妨げるものであると、細胞は癌に似た状態になることがあります。細胞にこのようなバリアントが多く生じた結果が癌です。
「遺伝子の変化により引き起こされるという点で、すべての癌は遺伝子の病気です。細胞の複製を正しくコントロールする遺伝子が損傷を受け、細胞の増殖に歯止めがかからなくなった状態です。」— 米国国立衛生研究所、国立がん研究所
上の図に示すとおり、一連の突然変異が蓄積して癌細胞が発生します。一方、変異は私たちが生まれながらに持っている遺伝子構造の一部でもあります。
癌の発生には、次の2種類の遺伝子変異が重要な役割を果たしています。
大部分の癌は突然変異によって発生しますが、最大で10%程度の癌は遺伝性の癌です。特定の遺伝性の遺伝子変異では、それを持っていると、癌にかかりやすくなることがあります。あるいは、若い頃に癌にかかったり、生涯のうちに複数の癌にかかったりする確率が高くなることがあります。
一方、癌家系のように見える場合でも、家族が実際に共有しているのは、変異を引き起こす可能性がある放射線や化学物質に曝露される生活環境や労働環境であることがあります。遺伝性であるかそうでないかの確認は遺伝学的検査で確認することができます。
遺伝的要因についての家族歴を調べるときに重要なのは、血縁者のみです。例えば、あなたのお父さんは第一度近親者、お父さんの血の繋がった兄弟であるおじさんは第二度近親者です。おじさんが結婚した女性はあなたのおばさんですが、血縁者ではありません。ですが、おじさんとおばさんの間に子どもがいる場合は、その子どもはあなたのいとこであり、第三度近親者となります。
第一度近親者 | 第二度近親者 | 第三度近親者 |
実母、実父、両親が同じ兄弟姉妹、実子(養父母、養子、異父・異母兄弟姉妹は第一度近親者ではありません) | 実祖父母、実おじ・おば、実甥・姪、異父・異母兄弟姉妹、実孫 | 実いとこ、曽祖父母、大おば、大おじ |
癌のリスクが高い家系があるように、一部の遺伝性疾患は特定の集団に発生しやすいことがあります。このような集団は、共通の祖先から特定の遺伝子構造を受け継いでいると考えられます。集団を構成する人々が共有する遺伝子に疾患を引き起こす遺伝子変異が含まれている場合、疾患はその集団内で発生しやすくなります。
遺伝学的検査が目指すことは以下のとおりです。