前立腺癌

BRCA1/2遺伝子検査の意義について

前立腺癌の中には進行がゆっくりで、ラテント癌や偶発癌として発見されるような寿命に直接影響しないと考えられる癌もある一方本邦の2020年の前立腺癌罹患数は 95,600 人以上で男性癌の中で最も多く、2018 年の死亡数(12,700 人以上)男性癌の中では 6 番目に多い部位です(2020 年のがん統計予測)[1]。 臨床的に診断される前立腺癌の一部は進行して致死的であり、転移を伴う症例では新規ホルモン製剤(ARAT:アンドロゲン受容体軸標的薬)や放射線治療など積極的な治療介入が望まれます。

これまでBRCA1およびBRCA2バリアントの遺伝子検査を受けた男性の数は女性よりも少ないですが、病的バリアントを保因する男性の方が癌のリスクが有意に高く[2]、前立腺癌のリスク上昇にも関連しています。 病的バリアントを有さない前立腺癌患者に比べると、リンパ節転移の頻度が高く予後不良を示し[3]、特にBRCA2のバリアントでは比較的若年発症が多く、病期が進行して診断されるため悪性度も高く、生存期間の中央値は 2.1 年に過ぎません[4]。そのため、BRCA1/2バリアントを悪性度の高い予後不良のマーカーとしてとらえることもできるため、相同組み換え修復経路に着目した治療法が期待されてきました。

PROfound 試験[5],[6]は、新規ホルモン製剤(ARAT)による前治療が無効であった相同組換え修復(HRR) 関連遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者を対象に、オラパリブ投与群と ARAT 投与群を比較した非盲検多施設共同第 III 相試験です[6]

PROpel試験は、mCRPCと診断された後に化学療法および新規ホルモン製剤(NHA)による治療歴のない患者さんを対象に、アビラテロンおよびprednisoneまたはプレドニゾロンに加えてリムパーザを投与した群の有効性、安全性、忍容性をプラセボ、アビラテロンおよびprednisoneまたはプレドニゾロンとの併用群と比較検討する無作為化二重盲検多施設共同第Ⅲ相試験です。

承認情報について

転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の血液を検体とし、PARP阻害剤による治療法の選択を目的とする。

保険適用について

BRCA1/2遺伝子検査(D006-18 BRCA1/2遺伝子検査 20,200点)
(注)適用の詳細については、医科診療報酬点数表の留意事項をご確認ください。

関連学会について

前立腺癌に対するコンパニオン診断としてのBRCA遺伝学的検査に関連する情報については以下の関連学会のウェブサイトをご参照ください。
日本泌尿器科学会(JUA) https://www.urol.or.jp/
日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC) https://johboc.jp/

[1] 国立がん研究センターがん対策情報センター『がん登録・統計』
[2] Hu C, et al. Association Between Inherited Germline Mutations in Cancer Predisposition Genes and Risk of Pancreatic Cancer. JAMA.2018 Jun 19;319(23):2401-2409. doi: 10.1001/jama.2018.6228. PubMed PMID: 29922827; PubMed Central PMCID: PMC6092184.(Hu 2018A)
[3] Tryggvadóttir L, Vidarsdóttir L, Thorgeirsson T, et al. Prostate cancer progression and survival in BRCA2 mutation carriers. J Natl Cancer Inst. 2007; 99(12): 929-35.[PMID:17565157]
[4] Mitra A, Fisher C, Foster CS, et al;IMPACT and EMBRACE Collaborators. Prostate cancer in male BRCA1 and BRCA2 mutation carriers has a more aggressive phenotype. Br J Cancer. 2008; 98(2): 502-7.[PMID:18182994]
[5] M. Hussain, et al. PROfound: Phase III study of olaparib versus enzalutamide or abiraterone for metastatic castration-resistant prostate cancer (mCRPC) with homologous recombination repair (HRR) gene alterations. European Society for Medical Oncology Volume 30 | Supplement 5 | October 2019
[6] J. de Bono, et al. Olaparib for Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer. N Eng J MED 382;22. May 28, 2020

BRACAnalysis診断システム( 前立腺癌 )関連資料