乳癌

BRCA1/2遺伝子検査の意義について

乳癌 は女性の癌の中で最も罹患率が高い癌で、全部位のおよそ20%を占めており、全乳癌の4%がBRCA1/2遺伝子変異に起因しています。生殖細胞系列BRCA1又はBRCA2遺伝子に変異を有する場合、乳癌及び卵巣癌を発症するリスクが非常に高くなり、70 歳までに乳癌を発症するリスクは87% にもなり、卵巣癌を発症するリスクが44% まで上昇するといわれています[1]。さらに、過去に癌と診断された遺伝子変異保因者は、異時性の原発性癌を発症するリスクが有意に上昇します。

2018年7月、アストラゼネカ社のPARP阻害剤オラパリブの乳癌への適応が拡大され、「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」の治療薬として追加されました。BRCA1/2 遺伝子変異を有するHER2陰性転移性乳癌治療において、オラパリブの効果と安全性を化学療法群と比較検証する非冒検無作為化国際多施設共同第Ⅲ相試験(OlympiAD 試験)では、化学療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、病勢進行または死亡のリスクを42% 低減することが示されました[2]

2022年8月、オラパリブの適応が再度拡大され「BRCA遺伝子バリアント陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌」の患者に対する薬物療法として追加されました。生殖細胞系列BRCA遺伝子バリアント陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳癌で、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者を対象に、術後薬物療法として投与したときのオラパリブの有効性および安全性をプラセボと比較検討する、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同第Ⅲ相試験(OlympiA試験)では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示し、浸潤性乳がんの再発、二次がん、または死亡リスクを42%低下させました[3]

2024年1月、ファイザーはPARP阻害剤タラゾパリブトシル酸塩の単剤療法による「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」の治療薬として、国内における製造販売承認を取得しました。EMBRACA試験は転移乳癌に対する化学療法歴があり、生殖細胞系BRCA遺伝子変異を有する局所進行または転移乳癌患者を対象に、本剤と治験責任医師が選択した化学療法を比較する第3相、非盲検、無作為化、並行、2群、多施設共同試験です。タラゾパリブ群は治験責任医師が選択した化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間の延長を示し、忍容性は良好でした。また、国内第1相試験では、BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性の局所進行または転移乳癌の日本人患者を対象に、本剤の有効性および安全性を評価し、臨床的に意味のある抗腫瘍効果が示されました。

承認情報について

HER2陰性の手術不能または転移再発の乳癌患者、もしくはHER2陰性の術後再発高リスクの乳癌患者でPARP阻害剤による治療法の選択を目的とする。

保険適用について

BRCA1/2遺伝子検査(D006-18 BRCA1/2遺伝子検査 20,200 点)
(注)適用の詳細については、医科診療報酬点数表の留意事項をご確認ください。

関連情報および学会について

乳癌患者に対する、コンパニオン診断としてのBRCA 遺伝学的検査に関連する情報については、以下の関連学会のウェブサイトをご参照ください。
[1] D.Fort, et al. Analysis of the BRCA1 and BRCA2 Genes in Breast Cancer Families. AJHG. 62, 3, March 1998.
[2] Robson M, et al. Olaparib for metastatic breast cancer in patients with a germline BRCA mutation. N Engl J Med. 2017;377(6):523-533.
[3]Tutt ANJ et al. Adjuvant Olaparib for Patients with BRCA1- or BRCA2-Mutated BreastCancer. N Engl J Med. 2021;384(25):2394-2405.

BRACAnalysis®診断システム(乳癌) 関連資料

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