卵巣癌

卵巣癌におけるBRACAnalysis®診断システム(BRCA1 /2 遺伝子検査)の意義について

生殖細胞系列BRCA1 又はBRCA2 遺伝子に病的バリアントを有する場合、乳癌及び卵巣癌を発症するリスクが非常に高くなり、70 歳までに乳癌を発症するリスクは 87% にもなり、卵巣癌を発症するリスクが44% まで上昇するといわれています[1]。さらに、過去に癌と診断された病的バリアント保持者は、異時性の原発性癌を発症するリスクが有意に上昇します。 卵巣は骨盤内臓器のために腫瘍が発生しても初期の段階では自覚症状に乏しく、およそ 40-50% の症例が予後不良なⅢ・Ⅳ期の進行症例であることから、進行症例における治癒成績の向上が卵巣癌治療の重要な課題となっており[2]、相同組み換え修復経路に着目した治療法が期待されてきました。

アストラゼネカ社の PARP 阻害剤オラパリブは、2018 年 1 月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」、2019 年 6 月には「BRCA 遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」を適応症として承認を取得しました。

初発のBRCA 遺伝子変異陽性卵巣癌患者を対象とし、オラパリブの単剤維持療法の有効性をプラセボと比較、評価することを目的とした第 III 相試験(SOLO-1)において、オラパリブ投与群はプラセボ投与群との比較で、病勢進行あるいは死亡のリスクを 70% 低減させ、統計学的・臨床的に有意義な無増悪生存期間(PFS)の延長が示されました[3]

卵巣癌でのBRCA1 /2 遺伝子検査適用について

  1. 初発の進行卵巣癌患者の血液を検体とし、抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的とする。
  2. 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の遺伝学的検査の適用範囲は次の通りです[4](※ 保険適用については次項に示します。)
    • 発症、未発症に関わらず(本人以外に)すでに家系内でBRCA1 または/ かつBRCA2 の病的バリアント保持が確認されている
    • 乳癌を発症しており、以下のいずれかに当てはまる
      • 45 歳以下の乳癌発症
      • 60 歳以下のトリプルネガティブ乳癌発症
      • 2 個以上の原発性乳癌発症
      • 第3 度近親者内に乳癌または卵巣癌発症者が1 名以上がいる
    • 卵巣癌、卵管癌および腹膜癌を発症
    • 男性乳癌を発症
    • 癌発症者でPARP 阻害薬に対するコンパニオン診断の適格基準を満たす場合、腫瘍組織プロファイリング検査で、BRCA1 または/ かつBRCA2 の生殖細胞系列の病的バリアント保持が疑われる

卵巣癌でのBRCA1 /2 遺伝子検査の保険適用について

  • 初発の進行卵巣癌患者の血液を検体とし、抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的とした場合に、BRCA1 /2 遺伝子検査(D006-18 BRCA1 /2 遺伝子検査 20,200 点)が保険適用されています。
  • また2020 年4 月より、乳癌、卵巣癌の既発症患者に対する遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の遺伝学的検査についても、BRCA1 /2 遺伝子検査(D006-18 BRCA1 /2 遺伝子検査 20,200 点)の保険適用が拡大されました。

BRCA1 /2 の遺伝学的検査に関連する情報および学会について

卵巣癌患者に対する、コンパニオン診断および遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)検査としてのBRCA1 あるいはBRCA2 の遺伝学的検査に関連する情報については、以下の関連学会をご参照ください。
[1] D.Fort, et al. Analysis of the BRCA1 and BRCA2 Genes in Breast Cancer Families. AJHG. 62, 3, March 1998.
[2] 卵巣癌治療ガイドライン 2015 年版 日本婦人科腫瘍学会
[3] K. Moore, et al. Maintenance Olaparib in Patients with Newly Diagnosed Advanced Ovarian Cancer. N Engl J Med 379;26. December 27, 2018.
[4] 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療の手引き(2017 年版)日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構

BRACAnalysis® 診断システム(卵巣癌) 関連資料