卵巣癌

卵巣癌におけるMyChoice®診断システムによるHRD検査の意義について

癌が発症するためには、父方と母方からそれぞれ受け継いだ癌抑制遺伝子の両方に変化またはバリアントが生じる必要があります。遺伝性乳癌または卵巣癌の場合、BRCA1/BRCA2遺伝子の最初のバリアントは遺伝的に受け継がれていますが、もう一方の正常なBRCA1/BRCA2遺伝子により正常なDNA修復が行われます。しかし、体細胞(腫瘍細胞)での突然変異やエピジェネティックな修飾(DNAのメチル化によって生じる遺伝子サイレンシングなど)により正常であったBRCA1/BRCA2遺伝子も不活化されると(ヘテロ接合性の消失:LOH)、細胞は正確性では劣る別のDNA修復機構に依存せざるを得なくなるため、エラーが蓄積します。相同組換え修復の主役となるBRCA1/BRCA2遺伝子の病的バリアントによって相同組換え修復機構が破綻した結果、ゲノム不安定化を引き起こし、最終的に癌化のリスクを高めると考えられています。

BRCA1/BRCA2遺伝子の生殖細胞系列(遺伝性)バリアントまたは体細胞(腫瘍)バリアントを有する卵巣癌患者さんは、PARP阻害薬により効果が得られることが示されています[1][2][3]。最近の研究では、患者の腫瘍におけるBRCA1/BRCA2遺伝子の状態に加えて、HRDに関連するバイオマーカーであるLOH、TAIおよびLSTによりゲノム不安定性の状態を評価することによって、HRDはPARP阻害薬投与後のPFS延長に関連する因子であることが示されています[4][5][6]。PAOLA-1試験[7]では、BRCA1/BRCA2バリアント保持者に加え、さらに20%近くがHRD陽性であり[7] 、これは卵巣癌患者の約50%が PARP阻害薬に反応すると特定できることを意味します。


MyChoice®診断システムによる検査の使用目的

MyChoice® 診断システムは、腫瘍組織から抽出したゲノム DNA のゲノム不安定性の状態(GIS)の評価により相同組換え修復欠損(HRD)を検出し、また、腫瘍組織から抽出したゲノムDNA中のBRCA1またはBRCA2遺伝子バリアントを検出し、PARP阻害薬の卵巣癌患者への適応を判定するための補助に用いられます。

留意事項:MyChoice® 診断システムは、ニラパリブまたはオラパリブの卵巣癌患者への適応を判定するための補助を目的に承認されています。本検査は遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)検査の目的には使用できません。

[1] Ledermann J, et al. Olaparib maintenance therapy in patients with platinum-sensitive relapsed serous ovarian cancer: a preplanned retrospective analysis of outcomes by BRCA status in a randomised phase 2 trial. Lancet Oncol. 2014 Jul; 15(8): 852-861.
[2] Kanjanapan Y, et al. Niraparib for the treatment of ovarian cancer. Expert Opin Pharmacother. 2017 Apr; 18(6): 631-640.
[3] Mullen MM, et al. Novel treatment options in platinum-sensitive recurrent ovarian cancer: A review. Gynecol Oncol. 2019 Feb; 152(2): 416-425.
[4] Heo YA, et al. Niraparib: A Review in Ovarian Cancer. Target Oncol. 2018 Aug; 13(4): 533-539.
[5] McLachlan J, et al. The current status of PARP inhibitors in ovarian cancer. Tumori. 2016 Oct 13; 102(5): 433-440.
[6] Kaye SB. Progress in the treatment of ovarian cancer-lessons from homologous recombination deficiency-the first 10 years. Ann Oncol. 2016 Apr; 27 Suppl 1: i1-i3.
[7] 社内資料:MyChoice® 診断システム承認時評価資料

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