遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)

遺伝性乳癌卵巣癌症候群[Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome(以下HBOC)]とは

HBOCとは、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌のリスクを高める遺伝性疾患です。HBOCの大部分は、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変化または遺伝子変異によるものです。これらの遺伝子バリアントは、母親または父親から受け継ぐ可能性があります。

BRCA1/2遺伝子検査を受けることでの利点について

BRCA1/2遺伝子検査を受ける利点は、病的変異が見つかった場合、乳癌または卵巣癌を発症する リスクが高いと判断できることです。既発症者の乳癌または卵巣癌の場合、外科的手術の意思決定 を行うためにBRCA1/2遺伝子検査が必要となります。また、BRCA1/2遺伝子検査の情報は、乳癌 の早期発見のためのMRI検査など、他の医療マネジメントの決定にも重要です。

BRCA1/2遺伝子検査で陽性と診断された患者さんの血縁者も乳癌または卵巣癌のリスクが高い可能性があります。血縁者の検査およびリスク管理に関する相談は、遺伝の専門家にご相談ください。

BRCA1/2遺伝子検査後の血縁者への影響について

BRCA1/2遺伝子検査で病的変異が見つかった場合、血縁者も同じ変異を保持している可能性があります。母親または父親どちらかが病的変異を保持している場合、病的変異が子供に受け継がれる 可能性は、性別に関係なく50%になります。

HBOC図

このような場合、血縁者に乳癌や卵巣癌の発症のリスクが一般より高い可能性があることを伝えることによって事前にがん予防の対策を立てることできます。また、血縁者が希望する場合、血縁者が同じ変異を保持しているかどうか遺伝子検査で確認することができます。

HBOCでのBRCA1/2遺伝子検査適用について

以下のいずれかの項目にあてはまる場合、BRCA1/2遺伝子検査には健康保険が適用されます。
  1. 乳癌を発症しており、以下のいずれかに当てはまる場合
    • 45歳以下で乳がんと診断された
    • 60歳以下でトリプルネガティブの乳がんと診断された
    • 両側の乳がんと診断された
    • 片方の乳房に複数の乳がん (原発性) を診断された
    • 男性で乳がんと診断された
    • 第3度近親者内に乳癌、卵巣癌または膵癌発症者がいる
  2. 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌と診断された場合
  3. 癌治療において、分子標的薬PARP阻害剤の適応かどうかを判断する場合

HBOCでのBRCA1/2遺伝子検査の保険算定について

2020年4月1日より、HBOCの疑いがある乳癌および卵巣癌・卵管癌の既発症者患者に対して、BRCA1/2遺伝子検査(D006-18BRCA1/2遺伝子検査 20,200点)が保険適用されました。また遺伝カウンセリング加算の対象検査に追加され(D026 検体検査判断料 患者1人につき、月1回に限り1,000点)、がん患者指導管理料(B001-23 医師が遺伝子検査の必要性等について文書により説明を行った場合 300点)が新設されました。

乳癌患者に対しては対側乳房切除術(K475)、卵巣・卵管切除術(K888)が保険適用され、卵巣癌患者に対しては両側乳房切除術(K475)が保険適用となりました。

乳房切除術を希望しなかった場合には、フォローアップとして、(E202 磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)(一連につき)の乳房MRI加算 100点)の算定が可能となりました。

HBOCに関連する情報および学会について

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