よくあるご質問 (FAQ): myChoiceTM診断システム

1. 背景

相同組換えは、二本鎖DNAの切断を元の状態に修復する最もエラーの少ない修復機構です。

 

相同組換え修復欠損は、相同組換え機構が欠損し、二本鎖DNAの切断を正確に修復できなくなる場合を言います。卵巣癌の約半数に、相同組換え修復欠損が認められます。

 

ゲノム不安定性の状態[Genomic instability(geneticまたはgenome instability)]は、細胞のDNAにみられる染色体の再構成(バリアント)が高頻度に起こる状態を言います。

 

細胞内にHRDがあると、相同組換え修復機構以外のDNA修復機構が細胞死を防ぐように働きます。これらの修復機構は、エラープローンの(エラーが起こりやすい)性質を持ち、染色体内のエラー(バリアント)の蓄積につながります。この状態をゲノム不安定性の状態と定義します。

 

HRDのある細胞では、よりエラープローンな経路、主に非相同末端結合(NHEJ)によってDNA一本鎖切断(DSB)修復が行われ、DNA損傷の蓄積およびゲノム不安定性の状態の増大につながります。PARP阻害薬は、DNA一本鎖切断(SSB)部位にあるDNA上のPARPと結合し、PARPを捕捉することでSSB修復を回避させます。DNA複製の際に、捕捉されたDNA-PARP複合体がDNA複製フォークの停止を引き起こし、フォークを崩壊させてDNA二本鎖切断(DSB)を起こします。この一連の作用によって、PARP阻害薬の投与後に癌特異的細胞死の基礎が形成されます。
下図はPARP阻害薬による癌特異的細胞死を示しています。

 


2. 製品

myChoice™診断システムは、固定処理した腫瘍組織検体から単離したDNAを用いて行う、相同組換え修復欠損(HRD)を検出するためのミリアドの次世代シークエンシングベースのコンパニオン診断プログラムです。①BRCA1/BRCA2遺伝子の一塩基バリアント、挿入および欠失、ならびにタンパク質コード領域およびイントロン/エクソン境界での大規模な再構成バリアントの定性的検出および分類について評価し、さらに②ゲノム不安定性の状態スコア(GIスコア)の判定を評価します。GIスコアは、3つのバイオマーカーであるヘテロ接合性の消失(LOH)、テロメアアレルの不均衡(TAI)および大規模な状態遷移(LST)のアルゴリズムによる測定法です。①および②の結果から検査結果は、HRDの陽性または陰性として報告されます。検査報告書については、3. 検査報告書をご確認ください。

 

この診断システムは、腫瘍検体から抽出したゲノムDNAにおけるゲノム不安定性の状態およびBRCA1/BRCA2遺伝子バリアントを評価することによって相同組換え修復欠損(HRD)を検出するために使用されます。結果は、ニラパリブトシル酸塩水和物(ニラパリブ、製品名:ゼジューラ)の単剤療法、またはオラパリブ(製品名:リムパーザ)とベバシズマブ(製品名:アバスチン)の併用療法に対する卵巣癌患者の適格性を判定する際の補助として使用されます。

 

myChoice™診断システムでは、患者腫瘍検体の 相同組換え修復欠損(HRD)状態に関する情報が得られます。HRD状態は、ゲノム不安定性の状態とBRCA1/BRCA2の腫瘍バリアントの状態を組み合わせた結果に基づいています。

  • ゲノム不安定性の状態の分析: 54,000以上のSNPプローブで腫瘍検体から抽出したDNAを濃縮し、次世代シーケンシングを行ってゲノムの再構築を行います。HRDの結果生じる染色体の異常を検出するための3つのバイオマーカーを解析、評価、スコア化します。
    • ヘテロ接合性の消失(LOH):ヘテロ接合性の消失は、片方の親アレルの消失につながります。
    • テロメアアレルの不均衡(TAI):染色体のテロメア末端まで広がるアレル不均衡は、乳癌および卵巣癌で認められるゲノム異常の一種であることが示されています。
    • 大規模な状態遷移(LST): 大規模な状態遷移とは、10Mb 以上の隣接領域間の染色体切断です。
  • BRCA1/BRCA2の解析:BRCA1またはBRCA2でのシーケンスバリアント、および大規模な再構成の検出と分類を行います。myChoice™診断システムは、体細胞由来および生殖細胞系列由来のバリアントを検出しますが、どちらの由来であるかを特定することはできません。

 

myChoice™診断システムの結果は、相同組換え修復欠損(HRD)陽性患者を特定する際の補助となるほか、承認済みの治療薬のラベリングに従ったポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬療法に対する卵巣癌患者の適格性を判断する際に役立ちます。

 

ゲノム内のLOH、TAI、LSTの位置を再構築するために、ゲノム全体を通して54,000以上のSNPがシーケンスされます。これらの染色体エラー(LOH、TAI、LST)の発現数をカウントし、その値を合計してゲノム不安定性の状態をスコア化し、特定の閾値に達した場合に陽性判定となります。陽性のカットオフ値は臨床試験で確認された42以上としています。

  • ヘテロ接合性の消失(LOH):ヘテロ接合性の消失は、片方の親アレルの消失につながります。15Mbを超えるLOH 領域は、相同組換え経路の欠陥と正の相関性を示します1。単一アレルの存在をカウントします。GIスコアの一部として使用されるLOHの計算は、Abkevichらが考察した方法1 をミリアドが実施したものです。
  • テロメアアレルの不均衡(TAI):染色体のテロメア末端まで広がるアレル不均衡は、乳癌および卵巣癌で認められるゲノム異常の一種であることが示されています2。テロメア領域の1:1アレル比の不均衡をカウントします。GIスコアの一部として使用されるテロメアアレル不均衡の計算は、Birkbakらが考察した方法2をミリアドが実施したものです。
  • 大規模な状態遷移(LST): 大規模な状態遷移とは、10Mb 以上の隣接領域間の染色体切断です。異常と正常なゲノムの領域間、または2つの異なる異常な領域間の遷移点をカウントします。腫瘍ゲノムにおけるLSTの推定は、Popovaらの方法3 をミリアドが実施したものです。
1 Abkevich V, et al. Patterns of genomic loss of heterozygosity predict homologous recombination repair defects in epithelial ovarian cancer. Br J Cancer. 2012 Nov 6; 107(10): 1776-1782.
2 Birkbak NJ, et al. Telomeric allelic imbalance indicates defective DNA repair and sensitivity to DNA-damaging agents. Cancer Discov. 2012 Apr;2(4): 366-375.
3 Popova T, et al. Ploidy and large-scale genomic instability consistently identify basal-like breast carcinomas with BRCA1/2 inactivation. Cancer Res.2012 Nov 1; 72(21): 5454-5462.

 

myChoice™診断システムは、BRCA1/BRCA2腫瘍遺伝子バリアント陽性またはゲノム不安定性の状態陽性の場合(ゲノム不安定性の状態スコアが42以上)を陽性判断として、厚生労働省から承認を受けています。

 

BRCA1またはBRCA2における欠損は相同組換え修復欠損(HRD)の最もよく知られた原因であるため、myChoice™️診断システムでのゲノム不安定性の状態の判定は、BRCA遺伝子バリアントおよびメチル化に対応するように設定されています。ゲノム不安定性の状態の陽性と陰性の閾値は、BRCA1もしくはBRCA2の遺伝子バリアントよびメチル化を伴う腫瘍の95%が含まれるカットオフ値を選択して決定しています。
薬剤に対する投与判断の目的としては、各種臨床試験で認められている閾値です。

 

 


3. 検査報告書

myChoice™診断システムの報告では、相同組換え修復欠損(HRD)状態の陽性/陰性を提示します。
腫瘍組織のBRCA1またはBRCA2の結果が陽性であるか、またはゲノム不安定性の状態の結果が陽性であれば、最終的なHRDの結果は陽性となります。検査の両部分ともに陽性である必要はなく、いずれかが陽性であれば最終結果も陽性となります。腫瘍組織にBRCA遺伝子バリアントが認められる場合、それ以降の生殖細胞系列由来の検査を円滑に進めるため、所見の正確な説明とその解釈が合わせて報告に記載されます。

 

ゲノム不安定性の状態は、検査報告書に陽性または陰性のいずれかで示されます。

 

腫瘍組織のBRCA1またはBRCA2の結果が陽性であるか、ゲノム不安定性の状態の結果が陽性であれば、最終的なmyChoice™診断システムでのHRD検査結果は陽性となります。検査の両部分ともに陽性である必要はなく、いずれかが陽性であれば最終結果も陽性となります。
BRCA遺伝子にVUSが認められ、かつ検査のゲノム不安定性の状態に関する部分が陽性となることがあります。この場合、その患者は HRD陽性と報告されます。

 

myChoice™️診断システムのゲノム不安定性の状態の解析とBRCA1/BRCA2のバリアント解析とは別の解析を実施しており、それぞれ独立していますので、VUSの再分類があってもゲノム不安定性の状態の解析に影響はありません。
ミリアドでは、患者の検査結果の全体的解釈に影響を及ぼす分類の変更があった場合[相同組換え修復欠損(HRD)の状態の変更またはBRCA1/BRCA2の腫瘍細胞バリアントの状態の変更(陰性から陽性または陽性から陰性)]、ミリアドから患者の医療従事者に修正報告が提示されます。

 

myChoice™診断システムでは、BRCA1/BRCA2遺伝子に腫瘍組織の病的バリアントがなく(陰性またはVUS)、検査のゲノム不安定性の状態に関する解析が不成功に終わった場合に、「Inconclusive(不確定)」として報告されます。
BRCA1/BRCA2遺伝子に腫瘍組織の病的バリアントが認められ(陽性)、ゲノム不安定性の状態の解析が不成功であった場合、myChoice™診断システムの検査結果は陽性であると報告されます。

 

不確定や不成功の結果の最も多い原因は、腫瘍細胞数が少ないこと(非腫瘍DNAの含有量が多いこと)およびDNAの品質不良です。特に検査のゲノム不安定性の状態に関する部分は、BRCA検査と比べて腫瘍DNA含有量に敏感ですので、検体における腫瘍細胞割合が20%、推奨は30%以上でご用意ください。ゲノム不安定性の状態の解析が失敗に終わった場合でも、検査のBRCAに関する部分の実行は可能です。

 

不確定や不成功を回避する最良の方法は、病理学的評価で腫瘍細胞率を推奨30%以上、少なくとも20%以上含んでいることが確認された検体を検査に用いることです。DNAの品質不良がある検体では、さらに多くの腫瘍DNAが検査に必要となります(DNAの品質が不良の場合、腫瘍細胞数が20%の検体でも不成功となることがあります)。
不成功となった場合、依頼元の医師に検査キャンセルが通知されます。再度、解析を希望される場合は、別の検体で新規に依頼します。腫瘍細胞数が多い検体が提供される場合、再提出された腫瘍検体での解析は成功となる可能性があります。腫瘍細胞数が多いほど、また固定処理が最適であるほど、検査のゲノム不安定性の状態に関する部分の成功率が高くなり、正確な検査報告を作成できる確率が高くなります。
検体作製の詳細については 株式会社エスアールエル データインフォメーションへお問合せください。

データインフォメーションセンター:042(646)5911(医療機関専用問い合わせ先)

 

myChoice™診断システムは、腫瘍組織をベースとした検査であり、腫瘍内の体細胞由来および生殖細胞系列由来のバリアントを検出することが可能ですが、体細胞由来か生殖細胞系列由来かの識別はできません。検査の主要目的は、遺伝性癌を診断することではありません。

 

ご不明な点がございましたら、株式会社エスアールエル データインフォメーションへお問合せください。
データインフォメーションセンター:042(646)5911(医療機関専用問い合わせ先)
myChoice™診断システムの技術的なご質問については、ミリアドのお問合せサイトよりお願いします。

 

 


4. 検査の要件

myChoice™診断システムで受け入れ可能な組織の種類は、卵巣腫瘍組織です。

  • myChoice™診断システムは、少なくとも40ミクロンの腫瘍を含むホルマリン固定パラフィン包埋ブロックからの切片スライドが必要です。
  • 病理学的レビューで、推奨は30%以上、少なくとも20%の腫瘍細胞が含まれている必要があります。DNAの品質が低いサンプルでは、アッセイにはより腫瘍DNA含有量が必要ですのでできるだけ30%以上を推奨します。選択するブロックが複数ある場合は、腫瘍の細胞性が可能な限り高いブロックの組織を提出してください。

検体作製の詳細については 株式会社エスアールエル データインフォメーションへお問合せください。
データインフォメーションセンター:042(646)5911(医療機関専用問い合わせ先)

myChoice™診断システム検査で受け入れ可能な検体は、腫瘍検体のみです。

抗悪性腫瘍剤による治療方法の選択を目的として、相同組換え修復欠損の評価を行った場合に、患者1人につき1回に限りの算定が保険適用条件です。

myChoice™診断システムの検査報告書の送付には出検後約3週間を要します。最終報告書は中間報告書のリンクをクリックして取得していただくことができます。